ホテルのドアを開いたとき、坊の顔が強ばった。
それは一瞬だったけれど、柔造は見逃さなかった。
京都市内でも有数のホテルの一部屋をとった。安いファッションホテルにしなかったのは、おそらく緊張しているであろう坊のためだった。
部屋に入るとシングルベッドが二つ並んでいた。丁寧にメイキングされている。手前のベッドに腰をおろし、スーツの上着を脱ぎハンガーにかけネクタイを緩める。坊は入口でつったったままだった。
「……風呂、先ええですか?」
たずねると、坊は無言で頷いた。
白くやわらかいタオルを手にトイレのついたバスルームに入る。熱い湯を頭から浴びながら、悪い想像ばかりが浮かんでは消えた。
坊に最後の冷静になる機会を与えた。成り行きでこんな展開になって、まだ高校生の坊には迷いがあるに違いない。だけど、風呂を出て本当にいなかったらと思うと胸の奥がちりちりする。それに下肢がざわついて落ち着かなかった。
シャワーを浴びタオルで髪の水気を拭きながらバスルームをでる。坊は奥のベッドに座っていた。想像は想像で終わった。もう坊に逃げるチャンスはない。やっぱり嫌だといわれても、やめてやるつもりはなかった。
続いて坊もシャワーを浴びると、ホテル備えつけの浴衣ででてきた。開いた合わせ目から成長期の胸元がのぞいて、股間が熱くなった。
「何か飲みますか?」
無言でいるのもつらくて、ベッドから降りて冷蔵庫を開ける。中にはアルコールとジュースをとお茶が並んでいた。缶ビールと坊用に炭酸飲料を取りだす。反対側のベッドに座っていた坊に渡すと、すこし安堵した表情になった。
「サンキュ」
これで少しでも和んでもらえるとありがたかった。
缶のプルトップをあけてビールを一気に飲む。苦みが広がって心地よかった。空腹のせいか酔いはすぐにまわった。頭の中が妙に浮上して気が大きくなる。半分以上ビールを残したままサイドテーブルに缶を置くと、坊が座っているベッドに上がった。大の男二人分の重みでシングルベッドが軋む。
坊が身構える隙もあたえず背後から抱きしめた。
「ちょっ」
腕の中の身体は一瞬でこわばった。ジュースを持つ手が震えている。缶をそっと奪いサイドテーブルにどけた。
「柔造」
名前を呼ばれて横顔を見つめる。坊はこちらから顔をそむけて、震える声を紡いだ。
「……電気、……消してくれ」
唇を軽めに吸いながら浴衣を剥ぐ。肌を撫でるとあからさまにびくっと身体が跳ねた。緊張が続いているのか指の先までガチガチだった。肩を掴みそのままゆっくり指で這うと、すべらかで筋肉の硬い感触が男を実感させた。少年だとばかり思っていたのに、いつの間にか立派になって妙に感慨深くなった。胸元を愛撫し小さな乳首をつまむと、また身体が跳ねて重ねた唇がぴくりと動いた。
「男でも胸って感じるんですね」
ちょっとおかしくなって呟く。坊は無言だった。暗くてどんな表情をしているのかわからないのかが残念だ。
乳首はすぐに硬くなった。吸うだけだった唇を割り、口のなかに舌を入れる。咥内は熱くて女と大差なかった。逃げる舌をつかまえて唾液を擦りあわせると、無言だった坊の吐息がかすかに漏れる。
「んっ」
これまで聞いたことのない艶めいた声に興奮した。
唇を離すと、上半身を舐めてじっくりと慈しむ。けれども坊の緊張がとけることはなかった。ただ、ときどき抜けるような微かなはな息だけが、坊も気持ちよくなっているのだと伝えてくれる。
タチの経験はあっても、ネコのきもちはわからない。それにこれまで抱関係した手慣れた同性たちよりも、坊の身体は気むずかしかった。あの手この手をくわえるけれど、坊はシーツを握りしめたままで、楽しむ余裕などなさそうだった。
せっかく肌を合わせるのだ。どうせなら骨の髄まで楽しませてやりたかった。だけど、それはどうも無理らしい。自分がセックスを下手だとは思ったことはないけれど、ちょっと自信喪失しそうだった。
浴衣の帯は取らず、こんどは下肢の裾から手をつっこんで内股を撫でる。
「待てっ!」
途端に坊の両足が勢いよく閉じた。掌を挟まれて動かせない。
「坊、これじゃできませんよ。足開いてください」
「……嫌や」
「坊、乱暴なことはしたないんです。開いて、ね?」
それでも頑なな足が開かれることなくて、坊の膝裏を持ち上げて無理やり片足を開いてやった。
「やめっ」
怯んだ隙にもう片膝も押し開き、両足の間に入り込む。これで、もう足を閉じることはできない。
視界が暗闇に慣れて坊の動きがみえる。両腕で顔を隠しているのがわかった。恥ずかしいのだ。それもそうか。ひと前で股を開くなんて、男なら考えもしないことだ。
覆い被さって腕をそっとはずしてやる。
「すんません」
気休めに謝った。それでもやめる気はさらさらなかった。
帯から下が完全に開いた浴衣のなかから、坊のペニスが飛び出ていた。夜目にもそれが天井むけてビンビンなのがわかる。勃起しているのもそうだが、何より下着を穿いてないことに驚いた。
「あの、坊……、なんでパンツ穿いてへんのですか?」
まさか準備OKってわけでもないだろう。
「……着替え持ってへんかったから。風呂入ったのに下着そのまんまは汚いやろ」
かすかな声でこたえが返ってきた。
「そう。そうですね」
賛同しながら、帰るときはノーパンなのかとつっこみたくなったけど我慢した。ムードを壊すことはしたくない。
坊の顔をみると、横に背けて唇を噛んでいるのがみえた。そのようすを見つめながら、そっと坊の大事なところを握りしめた。
「――あっ!」
坊は甲高い声をあげて開いた両足が大きくしなった。
「嫌や! やっぱやめえっ!」
急に肩を掴まれて力一杯の抵抗がはじまった。突き飛ばされないよう身体を押さえつける。バタつく足がうっとうしかった。堪えながらペニスを数回擦ると、一瞬で抵抗はなくなり、先っぽから汁が溢れだしてくる。
「あっあっ! ……柔、造……やめえ」
坊は震えながらそれでも拒絶した。その初心な反応にふと疑惑が浮かぶ。思いきってたずねた。
「坊、もしかして、女とも……ないんですか?」
坊は無言だった。それがすべてを肯定していた。いいようのない高揚感に火がつく。自分のアレがぐんっと持ち上がったのが見なくてもわかった。新雪を踏みしめる直前の高鳴りは筆舌に尽くしがたいものがあった。
けれど、そこには激しい罪悪感が寄り添っていた。嫌がってもやめてやる気なんてなかった。しかしまっさらなのだとわかってしまうと、その綺麗な身体に傷をつけることには躊躇する。
やめろといいながら、掌中の坊は硬いままだった。それにもう暴れる気配はなくて、多分坊の中の理性が負けたのだと思った。だったら、せめてこれだけは解放してやりたい。
ゆっくりと動きを再開する。坊はひと声も漏らすまいとでもいうように両手で口を押さえていた。無音になった室内にぬるついた我慢汁の濡れた音だけが響く。まだ大人に成りきっていないペニスの皮が余ってよく動く
一分ほど扱いたあと裏筋を擦り先っぽの割れ目をぐりぐりしてやると、坊が激しく身悶えた。ここが気持ちいいのかと思った途端、とぴゅっと精液が噴きだす。噴水ように勢いがよくて大量で、そのまま腹に散った。射精を終えると坊の身体は痙攣していた。こんなに早くイかれるとは思っていなくて、呆気に取られながら、顔に視線を向けてたずねた。
「やめたほうがええですか?」
少し間を置いて、坊は「ああ」とだけいった。
後始末をしたあと、坊の寝息に背を向けて、反対側のベッドでオナニーをした。
坊の若い肉体に触れて、期待に満ちた股間は完全に勃起していた。それを掌で握るとむなしさがこみ上げる。声をつめて自分をシコるといつもより興奮していた。
これを坊のなかにつっこみたかった。坊の穴はきっと狭くて気持ちいいに違いない。そこをぐちゅぐちゅにして、何度も犯したかった。坊を女にしてしまいたかった。
気がついたら頭の中で坊を抱いていた。想像の坊は激しくしがみついて、あんあん泣いて感じまくっていた。その瞬間熱が弾けた。
「ううっ」
オナニーとは思えないくらい物凄い快感だった。堪えきれず声が漏れた。慌ててうしろを振りかえると、坊はすやすやと眠っていた。ほっと胸を撫でおろす。汚れを処理してから坊の眠るベッドに戻った。
隣に潜りこみ乱れたシーツを肩までかけなおしてやった。
坊の身体にそっと腕を回して、ゆっくりと目蓋をとじる。頭の中で坊と二回目のセックスをしながら眠りについた。
end.
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