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短編 第一話 01

部屋のなかは薄煙でよどんでいた。おもわず口元をおさえ顔をしかめる。こんな空気はすいたくない。部屋のなかを見渡すと一面ゴミと衣類と雑誌だらけで、とても人が住める空間とはおもえない。けれども、そんなゴミ山のなかに主らしき銀髪がみえた。どうやらベッドらしき場所で寝ているようだ。
柳生は部屋にははいらず声をかける。
「まだ寝ているのですか」
声をかけてすこしまってみたけれど返事はない。起きていないのか無視をされているのかはわからない。
「練習にきてください」
本日の用件をつたえてみる。しかし仁王はうごかない。やはりまだ寝ているのかもしれない。柳生は諦めのため息をはくと、足の踏み場もな部屋に無理やり足を踏みいれた。
「いい加減、叱られますよ。真田君に」
と、いうと、身体がかすかに動いた。しかしそれは本当に一瞬で、起きあがる気配もない。
もしかして気のせいだったのか。
「くだらないことで叱られたくないでしょう?今日は絶対にあなたを引っ張ってくるようにといわれています。何が何でもきてもらいますよ」
柳生は指先だけをつかって身体をかくしているゴミたちをかきわけた。汚いものにはできるだけ触りたくない。
「――仁王君、返事をしてください。本当は起きているのでしょう」
露わになった仁王は下着姿のままうつ伏せで眠っていた。その背中をゆする。
「それにこんな格好で寝たら、かぜ引きますよ」
何度も身体をゆらす。
「うるさか!」
しつこくゆすったせいか、ようやく反応があった。
「ほら、起きて。練習にいきますよ」
「めんどい。明日いくわ」
「駄目です。絶対に今日参加してもらいます」
腕をつかみ無理やり起こす。
「あー!ウザいぜよ!そんなに真田の機嫌取りたいンか」
その言葉に身体が凍りつく。むりやり起こした仁王がこちらをみているのに、うまく表情をつくれない。
「き、機嫌だなんて……、妙ないい方はやめたまえ」
と、いうだけが精一杯だ。仁王をつかむ手にも力がはいらなくて、腕をはなしてしまった。仁王はこれ幸いとベッドに寝ころがる。
「ほんまかのー」
「どういう意味ですか」
冷静さをとりもどそうと、眼鏡をおしあげた。
「おまえ、真田とヤっとるじゃろ」
耳に届いた瞬間、血の気が引くおもいがした。ベッドからはなれ後ずさる。
みおろした仁王はにやにやといやらしく笑っていた。

つづく

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